「teiten2000とは」 |
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- teiten2000とは(簡易version)
窓からながめた景色は時間とともに変化していきます。雲がでたり、日がさしたり、雨が降り出したり、雪がつもったり、時には虹がでたり。
このような景観の変化と気象の観測がいっしょに記録されたら、自然のうつろいを教材にできるんじゃないかな? 1997年、福島県阿武隈山系の小さな学校で理科教師とボランティアによる手作りの定点観測プロジェクトが生まれました。
2000年、全国に定点観測網を広げるプロジェクトとして、teiten2000プロジェクトがスタート。 北は北海道から、南は沖縄、日本全国19地点、加えて南半球のオーストラリアでも数年間に及ぶ定点観測が実施され、たくさんのデータが記録されました。
現在、teiten2000ではデータの整理とワークベンチや教材の開発に取り組んでいます。
- teiten2000とは(詳細version)
- 葛尾中学校定点観測システム
福島県葛尾村立葛尾中学校は,文部省(現在の文部科学省)と通商産業省(現在の経済産業省)が所管して実施された「100 校プロジェクト」の参加校として,平成7年(1995年)6月にunix サーバ(PANIX)やルーターなどのインターネットへの接続機器と3.14kbpsの専用線が敷設された。
当初は、教員がサーバ管理などのネットワーク運用を担う体制となっていたが、ネットワークの知識や技術不足からトラブルが続き、安定的したネットワーク運用がままならない状態にあった。そんな最中の8月、東北学院中学校・高等学校の井口巌氏の呼びかけで東北地区のインターネット接続校及び地域ネットワークの研究者との会合が行われる。これをきっかけに、齋藤武夫氏を中心に東北学術情報ネットワーク協議会(TiA)から技術面・運用面でのサポートの手がさしのべられることで、教員はネットワークの教育利用に専念していく。活用が進めば、より使いやすいシステムを求めることになる。教師のネットワーク利用の求めに地域ボランティアのサポートが呼応する形で,順次校内LAN の構築・整備・拡張が行われ,様々な場面でネットワーク活用の実験的な取り組みが行われた.
平成9年(1997年)4月,中古のビデオカメラ(National製 MAC LOAD)を利用したWebCamera と市販の気象観測ユニット(米国DAVIS社製WeatherMonitorII ) とを組み合わせた簡易な定点観測システムを構築し,試験運用を開始した.ビデオカメラから同軸ケーブルで送られてくるNTSC 信号をビデオキャプチャーカード経由でパソコン(MacOS)に取り込み、ファイルサーバ上のネットワークディスクにjpeg画像(32万画素相当)として一定時間間隔(3分毎/1時間毎)で保存するプログラム(MacWebCam / Apple Script)を動かした.
また,気象観測ユニットを接続したサーバ機(FreeBSD) では,10分毎に気象情報を取り込み, 気温・湿度・気圧・風向・風速などの数値データをグラフ化(gplot)するとともに、定点カメラ画像と組み合わせてリアルタイムで景観・気象情報を示すWeb ページを自動生成した.このような安価でシンプルなシステムが長期間稼動し続けることで気象データや定点カメラ画像が蓄積され,数年間の変化を網羅的に参照できる気象データベースとなった。
葛尾中学校での試行的な定点観測の運用から,課題も明らかになっていった。長期間の安定した連続観測に耐えるサーバシステムを開発すること、カメラの解像度を上げて高精細な定点カメラ画像を取得すること,さらに複数の地点に同様の観測装置を配して多地点での観測を行うことなど、発展させた観測を行うことで,点で観測する気象現象を時間的・空間的に連続的な変化として可視化して捉えることができる教材となることが予見された.
地域ボランティアの協力で中古機器や廃物を利用した試行的な定点観測システムを構築。定点カメラ画像と気象情報を発信するとともにデータを蓄積して教材として活用するWebページを公開した。teiten2000プロジェクトの前身となる。
- teiten2000プロジェクト
平成12年度(2000年),全国広域の定点観測に興味を持つ小・中・高等学校教員,研究者,ネットワーク関係者が集まり,広域定点観測網実証コンソーシアムを形成した.折りしも文部省(現在の文部科学省)がバーチャル・エージェンシー「教育の情報化プロジェクト」報告に係る事業の一環として,教育用コンテンツ開発事業の公募が実施され,コンソーシアムからの提案が「広域定点観測網実証プロジェクト」として採択された. これ以降のプロジェクトを総称して,teiten2000 プロジェクトと称している。
このプロジェクトは,「電子百葉箱」と「定点カメラ」を1ユニットとする定点観測装置(ローカルサーバ)を開発し、同一経度・緯度等の意味を持つ多地点に設置することで、各地点におけるローカルな気象観測、景観撮影を長期間連続的に行う。また、データの集中蓄積装置(セントラルサーバ) を設置し、さまざまな比較対照による調査が可能な学習教材(素材)としてネットワークを通じて配信することを目的とした。
プロジェクトは、気象データおよび高解像度の定点カメラ画像をインターネットを経由してセントラルサーバに自動収集・蓄積するシステムを構築。2000年9月からデータ収集および教育利用インターフェースの提供を開始し、2000年12月末までに東北地方を中心に以下に示す10ヶ所の観測地点にローカルサーバを設置した.
│サイト │設置組織 │SITE ID │記録期間 │ │M-01函館 │公立はこだて未来大学 │JPNHKD001 │2000/10/14 - 2005/11/21│ │M-02青森 │青森県総合学校教育センター │JPNAMR001 │2000/11/04 - 2007/12/02│ │M-03岩手 │岩手県立総合教育センター │JPNIWT001 │2000/12/08 - 2007/11/02│ │M-04宮城 │国立宮城工業高等専門学校 │JPNMYG001 │2000/11/07 - 2005/01/12│ │M-05福島 │福島学院短期大学 │JPNFKS001 │2000/10/14 - 2007/11/08│ │M-06いわき│財団法人福島県いわき海浜自然の家 │JPNFKS002 │2000/10/20 - 2007/06/09│ │M-07郡山 │財団法人福島県郡山自然の家 │JPNFKS003 │2000/11/25 - 2004/09/05│ │M-08会津 │財団法人福島県会津自然の家 │JPNFKS004 │2000/10/28 - 2006/10/02│ │M-09新潟 │新潟清陵大学 │JPNNGT001 │2000/10/30 - 2005/03/21│ │M-10大津 │大津市立瀬田小学校 │JPNSIG001 │2000/11/11 - 2004/07/02│
- E-squareプロジェクト
平成13年度(2001年)に(財) コンピュータ教育開発センター(略称CEC)のE-squareプロジェクトの「地域企画」において、「定点観測システムの地域展開とコミュニティの形成」として採択12) された。このプロジェクトでは東日本に偏在した観測ポイントを西日本方面にも展開することで日本列島の特徴ある気象区分を網羅し、同一経度・同一緯度、東西・南北の気象の比較を行えるようにすることを目的とした。その結果、西日本を中心に次に示す8ヶ所の観測地点を増設することで,観測ポイントが全国18カ所に広がった。
│サイト │設置組織 │SITE ID │記録期間 │ │C-01富山 │富山大学 │JPNTYM001 │2002/01/17 - 2007/04/22│ │C-02高知 │高知工科大学 │JPNKCH001 │2002/01/21 - 2007/12/02│ │C-03静岡 │静岡大学浜松キャンパス │JPNSZK001 │2002/01/27 - 2007/12/02│ │C-04松本 │松本市教育文化センター │JPNNGN001 │2002/03/05 - 2007/12/02│ │C-05松江 │島根県立松江教育文化センター │JPNSMN001 │2002/03/20 - 2004/03/19│ │C-06沖縄 │琉球大学教育学部附属小学校 │JPNOKN001 │2002/03/25 - 2007/12/02│ │C-07長崎 │長崎市立長崎中学校 │JPNNGS001 │2002/04/11 - 2007/11/20│ │C-08広島 │広島大学大学院附属臨海実験所 │JPNHRS001 │2002/08/06 - 2007/12/02│
- JNK4での運用
平成16年度(2004年)よりNPO法人 情報ネットワーク教育活用研究協議会(略称JNK4)の協力により,日本国内との比較のため、経度が近似し、季節が日本と逆になるオーストラリア東海岸の Cairnsに観測ポイントを設置した。また、2000年の観測開始から日々蓄積されるデータ量の増加により、セントラルサーバのインデックスファイルの作成システムに障害が発生していたデータベース構造の見直しを行い、改修をするとともに、気象データのグラフ表示などの低学年用インターフェースの改善にも取り組んだ。
また、文部科学省とのコンテンツ提供の契約期間が2005年度末に終了したことにより、2005 年プロジェクトの運営を情報ネットワーク教育活用研究協議会へ移管し,2007年12月までデータの収集とリアルタイムの定点観測情報提供サービスの運用を継続した. その後2008年以降、セントラルサーバによる新たな定点情報の収集は停止し、これまで蓄積してきたデータの整理と、教材として活用しやすいインターフェースの提供を行っている。
│サイト │設置組織 │SITE ID │記録期間 │ │J-01Cairn │Trinity Anglican School White Rock│AUSQLD001 │2004/09/01 - 2005/11/26│
- 定点観測システムの概要
teiten2000 のシステムは,各地の観測ポイントごとに設置される気象センサーと定点カメラが接続されたローカルサーバと、ローカルサーバからデータを収集・蓄積し、定点観測情報としてインターネットに公開するセントラルサーバから構成されている。
各観測ポイントに設置されたローカルサーバが、定期的に気象・景観データを記録するとともに、インターネットを介してセントラルサーバが各ローカルサーバからデータを集約・蓄積することでWeb公開を行っている。
ローカルサーバは,インターネットに接続されたサーバ本体と,気象センサー,定点カメラ,およびUPS により構成される.
(1) サーバ本体
平成12年度当初のローカルサーバは,市販のAT 互換機にFreeBSD を搭載したサーバー本体のCOM ポートに気象センサー,USBポートに定点カメラを接続し,一定時間間隔(気象は5分間隔,定点カメラ画像は3時から21 時までが10分間隔,それ以外は1時間間隔)でデータを取得・蓄積し,インターネットを介したセントラルサーバからの要求に応じて,気象データ及び定点カメラ画像ファイルを送出する.
データの欠落を防ぐために、ストレージが許す範囲でローカルサーバにもデータを一定期間保存する。ローカルサーバとセントラルサーバ間のやりとりにはXML を使用している.なお、停電時や電圧の安定化のために、ローカルサーバの電源はUPS経由で確保した。
平成13 年度以降は,本プロジェクトで製作されたプロトタイプを製品化した(株)内田洋行の一体型システム定点Cubeを使用した。
(2) 気象センサー
平成12年度当初,気象センサーには葛尾中学校で使用していたDavis社WeatherMonitorII の上位機種であるGroWeather を採用した.WeatherMonitorII で観測できた気温[℃]・湿度[%]・風速[m/s]・風向[deg]・降水量[mm]・気圧[hPa]に加えて,太陽放射強度[W/m2]や地中温度[℃]を測定できるからである.平成13 年度以降は,GroWeather の後継機種であるVantage Pro Plus を採用した.基本的に気象センサーの設置は屋上などの周囲に障害物のない場所であることが要求され,一定期間データを蓄積するデーターロガーを経由して、シリアルポートによりサーバに接続される。
(3) 定点カメラ
葛尾中学校における3年間の試行的な定点観測システムの運用から,教材として活用される定点カメラ画像は年間の田圃の様子の変化、季節の移り変わりによる樹木の変化などが画像を拡大することで観察できる程度に高精細である必要がわかった。そこで2000年当時、最も高精細かつ広角域の画角を持つ200 万画素のディジタルカメラを採用し、コンピュータから制御できるように改造を行った。
また、屋外に設置されるディジタルカメラは風雨や積雪、紫外線等の厳しい気象にさらされることと同時にクリアな視界が確保されなければならいことから、撮影ガラス面に光触媒超親水性技術を応用する特殊加工を施した全天候型のハウジングを開発した。
定点カメラは気象センサー同様、屋外に設置されUSBケーブル経由でサーバに接続される。その際、USB規格の制限によりサーバと定点カメラが20m以内で接続される必要がある。teiten2000では定点カメラ画像の教育的価値を重要視したため、函館や島根のように気象データと定点カメラ画像の収集を別サーバにより運用する観測ポイントも多い。