青森県は本州の最北端に位置し、日本海、太平洋の双方に面した地形である。北海道との境界には津軽海峡があり、県の東部、西部および北部の3面を海に囲まれた地形である。全般的に県の北部は平野部であり、南部は白神山地および八甲田山系などの山間地域となる。東北地方の他県と異なることは、明確な脊梁山脈が存在しないことである。これにより冬季における北西季節風が三本木原へ、晩春の6月頃の「やませ(注1)」が津軽地方に吹きぬける。つまり青森県の各地域は太平洋側と日本海側の気候の特徴を併せ持つ形になる。
ケッペンの気候区分によれば、青森県は広義的に冷帯湿潤気候(Dfb)に包含される。
しかし、詳細には津軽半島西半分を含む日本海側地域、弘前など岩木山〜八甲田山系を含む内陸地域および青森、八戸、三沢など陸奥湾周辺を含む太平洋側地域に概ね3分割される。
陸奥湾周辺を含む太平洋側地域は春〜夏季にかけて冷涼湿潤な気候となる。これは「やませ」に代表されるように太平洋の親潮と季節的な北東気流によるものである。冬季は八甲田山系以北では北西季節風が東部に吹き抜けるが、陸奥湾により冷却が緩和されるため寒冷になりにくい。また同様な理由から北部における日本海側と太平洋側における気温差は小さい。年間降水量は太平洋側南部において少なく(約1000mm)、陸奥湾周辺で多い(約1400mm)。特に太平洋側南部は冬季の八甲田山系を超える乾燥風の影響をうけるため、冬季乾燥気候となり降水量が少ない。
内陸地域は通年で気温が低く、県内で最も気温が低い地域である。また盆地における気温年較差が大きいことなど明らかに内陸性気候の特徴を示している。しかし海洋における温暖の影響を受けるため、岩手県内陸部のような冬季の気温低下はみられない。夏季の内陸部において気温が高くなるのは八甲田山系を超える東風の影響を受けたフェ−ン現象の結果である。また冬季における低温は八甲田山系の標高、および内陸地域の放射冷却によるものである。内陸における降水量は1200mm前後であり季節的な偏りは小さい。
日本海側の地域では春から夏にかけて北部地域を太平洋から日本海に吹きぬける「やませ」の影響を受け冷涼になる。しかし八甲田山系より南になる日本海岸の地域はやませの影響を受けにくいため比較的高温になる。従って日本海側でも「やませ」の影響をうける深浦付近と影響をうけない地域との気温差が生じる。一方、冬季に北西季節風の影響を受ける日本海側および太平洋側の北部地域はほぼ同様の気温分布となる。年間降水量は日本海側で1500mmを超える地域があり、県内では最も多雨の地域である。降水量の季節的偏りは少ないが冬季と比較してやや夏季に多いという傾向がみられる。
注1)やませ:夏季において、主に北日本で吹く冷湿な北東風をいう。
親潮の影響を受けて太平洋側に発生し、これが冷害の原因となる場合も少なくない。