北海道は日本の北端の独立島で、都府県で最大となる岩手県の約5.5倍の面積である。ケッペンの気候区分では総じて冷帯湿潤気候(Dfb)に包含され、一口に言えば冬季は寒冷、夏季においても冷涼で、総じて四季の変化が不明瞭な気候である。しかし地域が広範になることから、道内各地における気候格差は大きい。
北海道は内陸のほぼ中央に2000m級の石狩山地があり、放射状に北側へ北見山地および天塩山地、南側へ日高山脈、東側は知床岬に至る1500m内外の山脈がみられる。また山脈の周辺および海岸地域には盆地や比較的大きな平野部がみられる。一方、札幌以西の胆振(いぶり)および渡島(おしま)半島は比較的標高の高い地域が多く、平野部各々の面積は小さい。気候区分は概ね以下に示す6区分となる。
1)オホ−ツク海沿岸地域
北東部のオホ−ツク海沿岸地域(北見山地を背景とする低地)は一般的に低温地域である。年間降水量は北海道内で最も少ない地域であり、1000mmに達しない地域も多い。降水量の季節性については、北部の稚内周辺地域は通年で降水がみられ、内陸における雪量が多い。一方、東部の網走周辺地域は降雨が夏季に偏る傾向がみられ、南風によるフェ−ン現象がみられる。冬季に海氷(流氷)が漂着する地域である。
2)天塩山脈周辺および日本海側の地域
日本海に面している地域であるにも係わらず、一般的に低温である。冬季における降水量が多く、同時に冬季に内陸の山脈から吹き出す冷涼な南東風の影響で体感的な寒さが著しい。名寄など盆地においては夏季における降水量が多く、冬季の静穏日には、放射冷却の影響で著しく低温となる。海岸線の平野部を除いて年間降水量は1400mmを超えるが海岸線の留萌付近は1300mm前後の降水量に留まる。
3)石狩、勇払平野、上川盆地周辺地域
太平洋に面した勇払平野(苫小牧周辺)は、夏季に南、南東風が卓越して比較的温暖であり降水量も多い。また初夏には比較的多くの霧がみられる。石狩平野においても同様に夏季の南東風が卓越するが、この地域は冬季に石狩湾方向からの西風がみられる。上川盆地では寒暖差が大きく、旭川周辺では夏季における高温、冬季における低温が著しい。旭川の年間降水量は約1200mm前後であるが、1500mmを超えるような地域もみられる。
4)石狩山地、日高山脈および夕張山地などを包含する地域
標高が高いため山地気候となり一般的に冷涼である。通年で降水量が多く、道内では最も降水量が多い地域である。日高山脈西側における降水量は3〜6月、東側は夏季に降水量が多い。また石狩山地周辺では冬季に降水量が顕著である。この地域における年間降水量は1600mm程度である。その他この地域で特徴的なことは2000mを超える山で高山ツンドラがみられることである。
5)太平洋岸地域(道東)
太平洋に面した平原で根釧台地や十勝平野などを包含する地域である。日高山脈東側山麓および至近の海岸地域は降水量が多く、特に夏季から秋季にかけて集中する。また十勝川河口周辺地域においては夏季の降水量が少なく、初夏には海霧がみられる。海岸部の釧路平野では夏季に南風とともに濃霧が発現し、この現象は海岸一帯に根室半島まで及ぶ。一方、帯広など内陸部は総じて降水量が少なく気温格差が大きい。夏の高温と冬の低温が顕著となる地域である。年間降水量は根室で約1000mmである。
6)胆振、渡島半島周辺地域
北海道では最も温暖な地域であり、年間降水量は1200〜1500mmの地域が多い。函館周辺は道内における冬季の最低気温が最も高い地域であり、特に松前半島の日本海沿岸地域はその傾向が高い。これは室蘭付近の海岸地域においてもまた同様である。渡島半島中央部の内陸地域は海岸地域と比較して冷涼である。また渡島半島で奥尻島より高緯度の地域は冬季における北西季節風の影響を受けやすい地域である。積丹半島は春〜夏季にかけて南東風となる「だし」と呼ばれる局地風がみられる地域である。また同半島から内陸部に至る地域では春〜夏季における降水量が多い。