岩手県は東北地方の太平洋側、北緯39〜40度付近に南北に長い形で位置し、面積は都府県の中で最大である。内陸の西側より奥羽山脈、中央に北上山地、そして三陸海岸地域がほぼ平行して南北に走る地形である。気候はこの山脈、山地および海岸地域における海流の影響をうける。つまり岩手における気候区分は概ね南北に長い3地域に区分される。
東側の海岸地域である久慈、宮古および釜石などでは、西方に二重の山地、山脈をもつため冬季の北西季節風による降水量が少ない。一般に冬季乾燥気候といわれる地域である。この地域は夏季、太平洋を南下する親潮(寒流)の影響で涼しい。「やませ」(注1)は夏季における低温風の代表的なもので低温の要因である。この地方は気温の年較差が小さく比較的温暖な地域であり、年間降水量は概ね1200mm程度である。例外的に釜石付近を中心とする中部三陸海岸沿では、夏季を中心に年降水量が1600mmを超える地域も存在する。
北上山地(高地)から西側は内陸性気候により気温格差が大きい。特に北上川流域の北上盆地では夏季と冬季における気温格差が顕著である。冬季において最も寒冷な地域は、早池峰山(1917m)(盛岡と宮古を結ぶ線上の位置)付近を中心とする地域であり、この地域は本州の中で最も寒い地域の一つである。この地域は西側に奥羽山脈が存在するため、冬季における積雪量は少なく、気温低下のみが顕著となる。この地域に位置する盛岡の年間降水量は概ね1200mm程度であり、この地域における降水量は三陸海岸と差異がない。
奥羽山脈は脊梁山脈であり、冬季における北西季節風の影響を直に受ける。従って冬季における降水量が多く、同様の理由で積雪量も多い。降水量の分布は概して奥羽山脈の標高に従順であり、この地域は通年で降水量が多い。従って年間降水量は少ない場所でも1400mmを越える。特にJR北上線沿線の湯田における年間降水量は約2200mmであり、県内では最も降水量が多い地域である。
注1)やませ:夏季において、主に北日本で吹く冷湿な北東風をいう。
親潮の影響を受けて太平洋側に発生し、これが冷害の原因となる場合も少なくない。